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電動ポンプの実用化により、エスプレッソ・マシンの電子化による自動化が急速に進みました。まず、抽出開始と終了の操作はレバー式からスイッチ式に替わり、腕力や微妙な手加減に頼ることなくエスプレッソの抽出が出来るようになりました。次に、抽出を自動終了する機能がついて、マシンの使用者はどのタイミングで抽出を止めるかの判断から解放され、粉をセットしたら「抽出」ボタンを押すだけになりました。 コーヒーの粉を詰める際の分量と押しつけ具合の加減については手作業のままでしたが、1980年代にはそれらも自動化され、スイッチ一つで自動的にコーヒー豆を挽き、フィルターに粉を詰め、指定された分量を抽出し、使用済みの粉を捨てるという、全自動マシンが実用化されました。一部機種においてはミルクの泡立てまで自動で行い、ボタン一つでカプチーノやカフェラテが注がれるようになりました。 但し、全自動マシンが一世を風靡した訳ではありません。レバーピストン式のいわゆる手動式マシンも根強い支持を受けていますし、様々なタイプの半自動マシン(抽出の開始と終了は手動で行うマシン、コーヒーの粉のセットは手動で行うマシン、ミルクは手動で泡立てるマシン)が多く用いられています。 マシンの自動化が進むほど「誰にでも安定したエスプレッソがいれられる」という長所がある反面、「抽出具合の微調整ができない」「バリスタの手並みをアピールできない」「個々の客の好みに応じられない」という短所があります。更に「マシンの価格が高く、維持コストも高い」という難点もあります。したがって、イタリアのように熟練したバリスタの層が厚く人件費も比較的安い地域では手動式マシンが重宝され、スイスやドイツのように熟練したバリスタの層が薄く人件費も高い地域では自動式マシンが重宝されるという傾向が生じました。 イタリアの老舗のスタイルは変わりませんでしたが、エスプレッソ・マシンの自動化が進んだことによって、二つの大きな変化が生じました。一つはエスプレッソ・マシンの家庭への進出です。1960年代以降、電動ポンプの実用化により家庭用のエスプレッソマシンも続々と登場してきました。業務用マシンと異なり小型化と低価格化を重視しているために性能面の制約はありますが、これまでポット式マシンしかなかった台所に、手動式マシンや様々なタイプの半自動式マシンが出現するようになりました。 もう一つの変化は、エスプレッソの各地域への伝播が始まったことです。エスプレッソ・マシンの自動化が進んだことにより、これまでマシンを操作する熟練したバリスタがいないこともありエスプレッソ・コーヒーの普及していなかった地域にも、エスプレッソが普及する可能性が開かれたのです。