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エスプレッソ歴史物語


第8話 電動ポンプの実用化


 エスプレッソマシンの自動化に向けて、多くのメーカーによる様々な努力が行われました。たとえばピストンの改良が挙げられます。1950年代に考案された水圧式ピストンは、レバーを手動で上げ下げする替わりに水道圧を利用してピストンを上下させるものです。1920-30年代の水圧式マシンは蒸気の代わりに水道圧でお湯を押すものでしたが、今回の水圧式ピストンは、抽出圧力をかけられるピストン式マシンの操作を水力の助けを借りて楽にするものでした。但し、マシンが複雑になるのと、地域により水道圧が一定しないこともあり、あまり普及しませんでした。

 あるいは、二重ボイラーの考案も挙げられます。従来のマシンでは、加熱されたボイラーのお湯がエスプレッソ・コーヒーの抽出に利用されると同時に、お湯が沸騰してできる蒸気がお湯を押し出す圧力やミルク泡立てに利用されてきました。二重ボイラーは、コーヒー抽出用のお湯を沸かすボイラーと、お湯を押し出す圧力やミルク泡立て用の蒸気を発生させるボイラーを別個に設けることにより、双方の温度を別個に管理して安定した品質のエスプレッソ抽出を可能にしました。但し、マシンが巨大になることもあり、普及には限界がありました。

 エスプレッソマシンの自動化に向けた大きな転機となったのは電動ポンプの実用化でした。1960年にバレンテ(Ernesto Valente)氏が完成させ1961年に世に送り出したマシン(FAEMA E61)は、電動ポンプを用いて常に一定の高圧でお湯をコーヒーの粉に送り込むことを可能にしました。

 さらにこのマシンには当時考案されたばかりの熱交換器が採用されました。これは、細い水の管がボイラーの熱湯の中を通る間に間接的に加熱されて適温のお湯になり、コーヒーの粉に送り込まれる仕組みです。これにより、二重ボイラーの欠点を克服し、コンパクトなマシンでコーヒー抽出とミルク泡立て用蒸気の温度を別途に調節できるようになりました。また、これまでの大容量ボイラーではタンク内に滞留する水が古くなりがちでしたが、熱交換器の採用により常に新鮮な水を抽出に用いることが可能になりました。

 初めての電動ポンプの実用化と熱交換器の採用により、コーヒーの粉をセットすれば後は小さなレバーで抽出開始と終了の操作をするだけで、安定した品質のエスプレッソをいれることができるようになりました。このマシンと同様の機種は他社より現在でも発売されています。

 エスプレッソの抽出に必要な圧力が電力で得られるようになり、エスプレッソマシンの電子化が急速に進みます。


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