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蒸気圧を利用してお湯を押し出しコーヒーの粉を通す方法が好評を博すと、エスプレッソ・マシン製造業者は次に、この蒸気圧を高めることにより更に魅力的なエスプレッソ・コーヒーが出来ないものかと考えるようになりました。 この当時のエスプレッソ・マシンは、ボイラー内でお湯を沸かして生じた蒸気がボイラー内で充満するに従ってそのままボイラー内のお湯を押し出すものであり、原理的には現在の直火式マシンや普及型の電気式マシンと同じものです。この方法で得られる蒸気圧は1.5気圧程度であり、この壁を如何にして突破するかをめぐり、マシン製造業者の試行錯誤が続きました。 ここでマシン製造業者を悩ませたのは、単に蒸気圧を上げればよいというものではなかった点です。 誰もが最初に思いつくのは、ボイラー内でお湯を沸かして生じた蒸気がボイラー内で充満する際、そのままボイラー内のお湯が押し出されるのに任せるのではなく、お湯の出口を開けずにボイラーを密閉したまま加熱を続け、更に蒸気を発生させて圧力を上げていき、十分に圧力が高まった時点でお湯の出口を開いて一気に蒸気圧でお湯を押し出す、というマシンでしょう。でも、このようなマシンで作ってみたコーヒーは、おそらく渋くて苦くて不味かったと思います。 理由はお湯の温度にあります。お湯は1気圧の下では100度で沸騰しますが、高い圧力の下では100度以上で沸騰するのです(圧力鍋はその原理を利用したものです)。現在ではエスプレッソをいれる際のお湯の温度は約90度が理想的だと言われていますが、その意味では、1.5気圧の蒸気圧でお湯を押し出すマシンは既に温度が若干高すぎるのです。 ましてや、ボイラーを密閉したまま加熱を続けて更に圧力を上げる方式のマシンでは、お湯の温度が100度をはるかに越えてしまいますから、90度のお湯では溶け出さないようなコーヒー豆の雑味成分までお湯の中に溶け出したり、温度が高すぎてコーヒーの一部成分が変化を起こしてしまったのです。 単に加熱して蒸気圧を上げれば良いというものではないことに気づいたマシン製造業者は、お湯を押し出す圧力をどうやって得るかに工夫を凝らすようになりました。たとえば、水道水の圧力を利用してボイラーのお湯を押し出す方式のマシンが考案されましたが、お湯の温度管理が難しく、また水道圧は場所によって異なるため、一般化しませんでした。あるいは、圧縮空気を利用したマシンも考案されましたが、お湯の温度管理は改善されたものの、圧縮空気のコントロールが難しく、これも普及しませんでした。 こうして試行錯誤を繰り返しつつ、時代は第二次世界大戦を迎えます。