※ このサイトは2005年に更新を停止しています。古い情報も多く、外部リンクも大半は切れていますが、当時の事情を知る資料として残しています。現在の情報源や参考資料としてではなく、2000-2005年当時の記録資料としてご覧ください。

トップ - 違い - 誤解 - 出逢うには - 書籍 - ウェブサイト - 歴史物語 - エッセイ - ラウンジ - 世論調査 - このサイト

エスプレッソ歴史物語


第2話 抽出方法の試行錯誤


 コーヒーについては様々な抽出方法が考案されましたが、その核心は、コーヒーの粉とお湯が如何にして出会いそして別れるかにあります。19世紀の欧州では、コーヒーの抽出速度を上げるために様々な機械が考案されましたが、その核心は、如何にしてコーヒーの粉の間をお湯が素早く通り抜けるように力を加えるかにあります。

 ドリップコーヒーでは、コーヒーの粉の間をお湯が通り抜ける力は、お湯自身の重みによる重力のみです。ここに更なる力を加えるには、引っ張る、押す、の2通りの方法があります。お湯を引っ張る方法とは出口側の気圧を下げる方法のことですが、お湯を押し出す方法には様々なバリエーションが考えられます。

 出口側の気圧を下げることによりコーヒーの抽出速度を速める機械は1840年代に数種類が考案されました。代表的なのはスコットランド人であるナピア(Robert Napier)氏が考案した真空抽出機ですが、これは現在のサイフォン方式の原型といえます。密閉された容器の中で加熱され沸騰したお湯は、蒸気に押されて別の容器に移動します。お湯が別の容器に移動し終わった時点で加熱を止めると、元の容器に充満している水蒸気は冷やされて水滴に戻り、この際に急激に気圧が下がります。このため別の容器に移動していたお湯は元の容器に引き戻されますが、この際に、2つの容器の間に挟まれているコーヒーの粉とフィルターを通り抜け、コーヒーとなって元の容器に抽出されます。

 余談ですが、現在サイフォン方式のコーヒーは日本の一部の喫茶店で見かけるだけで、世界的にも下火になっています。ドリップ方式ではコーヒーの粉自体もフィルターの役割を果たしているのに較べて現在のサイフォン方式ではお湯の中でコーヒーの粉が攪拌されるため、不純物の除去の観点から非効率だと批判する人もいます。しかしサイフォン方式は、単に見た目の楽しさだけではなく、ドリップ方式よりも抽出力が強い(したがって比較的細挽きの粉で比較的濃厚なコーヒーを入れられる)という点も評価されてしかるべきだと私は考えています。

 真空抽出機とは逆に、力を加えてお湯を押し出すアプローチの機械は、1820年前後より様々なものが考案されましたが、いずれも試作品の域を出ることなく、実用化のための試行錯誤の時代が続きました。

 実用化された機械が広く公開されたのは、1855年のパリ万国博覧会に出品されたものが初めてです。1843年にフランス人のデサンテ(Edward Loysel de Santais)氏が考案したこの機械は、蒸気機関を備えたタワー型の大きなものであり、1時間に2000杯分のコーヒーを(ポット単位で)抽出したと伝えられています。原理的には、蒸気圧でお湯をタワーの上部へ押し上げた後、高低差とお湯の重みを利用してタワー下部のコーヒーの粉へ通す方法でした。現在のマンション屋上にある給水タンクで水道水に圧力をかける方法と同じ原理であり、蒸気圧で直接お湯を押していた訳ではありません。この機械は注目を集めましたが、余りにも大きく複雑で精巧だったため、結局業務用には普及しませんでした。


←← 目次へ    前の話へ 次の話へ

トップ - 違い - 誤解 - 出逢うには - 書籍 - ウェブサイト - 歴史物語 - エッセイ - ラウンジ - 世論調査 - このサイト

Copyright (c) 2000-2005,2013,2024 「エスプレッソの扉」バリスタ  All rights reserved.
バリスタ宛メールはエスプレッソ・ラウンジで受け付けています。