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エッセイ・エスプレッソ


第34話 エスプレッソ抽出量の「守・破・離」


 エスプレッソの理想的な抽出量は30ccとよく言われる。これは先人の経験則である。少なめに抽出するとリストレット、多めに抽出するとルンゴとも言う。

 最初は30ccの抽出を安定して繰り返せるようになることが大切である。狙った分量で抽出を止める操作にも慣れが必要だし、味の基準がなければ比較も出来ない。

 しかし、エスプレッソマシンのフィルターの大きさは機種によって異なり、それに応じてコーヒー豆の使用量も異なる。その違いを無視して30ccにこだわっても、理想的な一杯が得られるとは限らない。おそらく30ccという経験則は業務用マシンによって得られたものだろうから、フィルターの小さな家庭用マシンでいれた30ccは既にルンゴなのかもしれない。

フィルター各種
様々なサイズのフィルター
(43mm, 49mm, 53mm, 58mm)
フィルター大小
43mm のフィルターと
58mm のフィルターの比較

 そこで、30ccの抽出ができるようになったら、では40ccや50ccだったら不味くなるのか、20ccや15ccだったら美味しくなるのか、いろいろ比較してみると面白い。何ccまでだったら出がらしにならずに美味しく飲めるかの限界ラインは、常に一定ではない。豆の種類や鮮度によっても、挽き具合によっても、詰め込み方によっても、仕上がりは異なってくる。

 そのうち、フィルターホルダーの下からカップへと流れ落ちるエスプレッソの色や勢いの変化を見ながら「あ、これ以上抽出すると美味しくなくなるな」というのが分かってくるようになる。濃い色が次第に薄くなり、流れる勢いが徐々に強くなる、そのどの時点で臨機応変に抽出を止めるかが腕の見せ所と感じるようになってくる。

フィルター各種 フィルター大小


 そうなってくると、いま何gの豆を使って何ccを抽出しているのかという数字はどうでも良くなってくる。どの機種のマシンを使おうと、フィルターに適量の粉を詰め込んで適量と思うところまで抽出して止めるだけである。

 使っているフィルターの大きさや抽出量を見た周囲の人は、それを「シングルのルンゴ」と呼ぶかもしれないし「ダブルのリストレット」と呼ぶかもしれない。仲間との情報交換には共通の用語が必要だが、自分で楽しむのが目的であれば、いれて、飲んで、美味しければ、言葉はいらない。


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