水道水には塩素(注1)が残留しているので、浄水器を通したり沸かしたり汲み置いたりして「カルキ抜き」をするとおいしくなります。それとは別に、エスプレッソマシンを長期間使っていると内部にカルシウム(注2)が付着してくるので、定期的に除去する必要がありますが、これを「カルキ抜き」という人もいます。一体「カルキ」とは塩素なのでしょうか、カルシウムなのでしょうか?
(注1) 正確には「次亜塩素酸」ですが、ここでは便宜上「塩素」とも呼びます。
(注2) 正確には「カルシウム、マグネシウム等のミネラル(無機物)」ですが、ここでは便宜上「カルシウム」とも呼びます。
「カルキ」とはオランダ語の kalk が語源で「石灰」という意味です。「石灰」と言っても「生石灰(酸化カルシウム)」「消石灰(水酸化カルシウム)」「石灰石(炭酸カルシウム)」など様々なカルシウム化合物があります。でも「カルキとはカルシウムのことです」という結論にならないのが面倒なところです。
水道水には殺菌のためにわざと塩素を入れています。最近の浄水場では塩素ガスを直接水に投入して次亜塩素酸を発生させることも多いですが、プールで見かけるように、次亜塩素酸カルシウムのような塩素剤を投入して次亜塩素酸を発生させることも多いです。
次亜塩素酸は、他の物質から電子を奪って塩化物イオンになる際に殺菌作用を示します。濃度が高いと漂白作用も示します。漂白殺菌のための塩素剤として我々の生活に身近なものが「さらし粉」です。化学式は非常に複雑ですが、要するに、消石灰に塩素を吸着させたものです。もう少し化学式が単純な次亜塩素酸カルシウムは「高度さらし粉」という名称でプールの殺菌剤にも使われています。
ここからは私の推測ですが、かつて日本でこれらの塩素剤を「カルキ(広義の石灰)」と俗称していた人達がいて、それが定着していつの間にか「カルキを入れる」=「塩素で殺菌する」、転じて「カルキを抜く」=「残留塩素を抜く」という言い方が定着したのではないかと思います。
日本では軟水が多くてカルシウム沈着が話題になることが少ないためか、現在では「カルキ」と言えば残留塩素のことを指すことが多いようです。例えば、電気ポットのメーカーなどは、一定時間沸騰させたり活性炭フィルターを通したりして残留塩素を除去することを「カルキ抜き」または「カルキ飛ばし」、定期的にカルシウムを除去することを「容器洗浄」または「クエン酸洗浄」と呼んでいるようです。
カルシウム沈着のことを「カルキ」と言うことが誤りだという訳ではありませんが、用法としては少数派です。いずれにせよ、カルキ抜きの話をする際には、残留塩素の話とカルシウムの話を混同しないように注意する必要がありますね。