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エッセイ・エスプレッソ


第23話 過ぎたるは及ばざるがごとし


 自宅で美味しいエスプレッソやカフェラテ・カプチーノに出逢うためのコツを説明する際に、最近よく「過ぎたるは(なお)及ばざるがごとし」という論語の一節を意識するようになった。元来は二人の弟子を比較評価した科白だが、ここでは「何事にも適量あり」という解釈である。

1.エスプレッソの分量(初級編)
 一杯分のコーヒー豆から抽出されるエスプレッソの適量は、マシンや豆の種類によって異なるが、一般的には30cc程度である。しかし、慣れないうちはどうしても多めに(普通のコーヒーカップや紙コップ一杯に)いれてしまいがちである。
 しかし、エスプレッソの場合、旨味成分は急速に凝縮して抽出されるため、適量以上に抽出を続けると、後は雑味成分ばかりの出がらしコーヒーになってしまう。

2.ミルクの泡立て(中級編)
 ミルクの泡立てといってもミルクが全て泡になってしまう訳ではないが、少しでも多くの泡を立てようと思うと、どうしてもスチームのスイッチを切るタイミングが遅くなってしまう。
 しかし、手で触れなくなるほど熱くなったら、泡が十分に立っていないくても終わりにしなければ、沸騰するほど加熱してもそれ以上泡は立たないし、むしろミルクの成分が熱で変質して不味くなってしまう。

3.豆の分量(上級編)
 少しでも美味しくいれようと思うと、ついつい豆の分量を多めにして、ついついタンピング(豆の詰め込み)を強めにしてしまう。この誘惑から逃れるのは難しく、私もついついやってしまう。しかしマシンの中で豆の占める空間は限られており、規定量よりも豆の分量が多いと、抽出開始時にお湯を吸って膨張する豆は行き場がなくなり、マシンの想定を超えて高い圧力がかかってしまう。
 圧力が高ければ高いほど美味しくなるのであれば、世の中には20気圧や30気圧のマシンがあふれているはずである。9気圧程度が最も旨味成分がバランス良く抽出されるというのが、先人達の試行錯誤による経験則である。
 多すぎる分量の豆を無理に詰め込んでも、ポタポタとしか抽出されず苦くて焼けた味のエスプレッソになったり、まったく抽出されずマシンに負担がかかったりしかねない。下手をするとフィルターホルダーがしっかり本体に装着されずに、抽出中に脱落したり蒸気が吹き出したりして危険である。

 特に友人を招いたときなどは、ついつい張り切ってサービス心からやり過ぎてしまいがちである。「過ぎたるは(なお)及ばざるがごとし」と唱えよう。


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