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エッセイ・エスプレッソ


第22話 ミルクでお絵描き


 最近は雑誌やテレビでも時折見かけるようになったが、エスプレッソに泡立てたミルクを注いでカフェ・ラテやカプチーノを作る際、様々な模様を描いてみせる技芸がある。人によって呼び名は様々だが「ラテ・アート」あるいは「デザイン・カプチーノ」と呼ばれることが多い。両者の区別も人によって異なり、同じものを指している場合も多いが、ここでは便宜上、次のように二つのスタイルを区別して説明することとしたい。

ラテ・アート
ラテ・アート(葉っぱ)
デザイン・カプチーノ
デザイン・カプチーノ(うさぎ)

 一つのスタイルは、道具は何も使わず、エスプレッソの上からミルクを巧みに注いで、エスプレッソ表面のクレマ(泡)の茶色とミルクの白色だけで模様を描く技芸である。ここではこれを「ラテ・アート」と呼ぶ。ハートが基本で、技術を習得すると葉っぱが描けるようになる。葉っぱ模様の作品を特に「ロゼッタ・ラテ」と呼ぶことがある。

 もう一つのスタイルは、エスプレッソの上からココア・パウダーを振りかけ、その上からミルクを巧みに注いで一定の模様を作り、次に爪楊枝を使ってココアをインク代わりに細かな模様を描いていく技芸である。ここではこれを「デザイン・カプチーノ」と呼ぶ。ウサギやネコなどの動物、天使や女の子などの人物を描くことが多いが、絵心があれば何でも描くことができる。

 両者の違いを一言で言えば「硬派のラテ・アート、軟派のデザイン・カプチーノ」である。
 ラテ・アートは小道具に一切頼らず、ひとえに、クレマの立ったエスプレッソを抽出し、ミルクを上手に泡立てて巧みに注ぐテクニックが勝負である。初めて見る人には魔法のようである。反面、ハートと葉っぱ以外のバリエーションはほとんどなく、ひたすら葉っぱを描くための修行を積んでも「他に何が出来るの?」と聞かれると辛い。
 デザイン・カプチーノは、ココアを使うのでエスプレッソのクレマが立たなくてもカバーできるし、ミルクの注ぎ方がうまくいかなくても出来た模様に応じた絵を描けばよい。かわいい絵を描けば、特に女性に喜ばれること請け合いである。反面、絵心がなければ何も描けないし、描いても「これ何の絵?ブタ?」と言われてしまうと辛い。

 模様の出来映えばかりに気を奪われてしまいがちだが、このような模様を描くためには、ミルクの泡立てが上手にできていることが必要条件である。特にロゼッタ・ラテがきれいにできているということは、クレマの立ったエスプレッソ、きめ細かく泡立てられたミルク、それを注ぐ技術の3拍子が揃っていることの証明でもある。

 自宅にエスプレッソ・マシンがある人が、一旦お店でラテ・アートやデザイン・カプチーノを見てしまうと、何とかして自分でも描けるようになりたいと憧れてしまう。しかし、ミルクの注ぎ方以前に、ミルクの泡立て方、場合によってはエスプレッソのいれ方から、ステップを踏んだ練習が必要である。また業務用のマシンと家庭用のマシンでは性能も異なり、全く同じものが誰にでもできる訳ではない。

(本来は業務用マシンを使って直接指導を受けないと修得は困難ですが、現在、家庭用マシンでどこまでできるか、練習中です。いずれ本サイト内でお絵描き教室のページを企画したいと思います。)

 上記の3拍子が揃っているという観点からも、今後、ラテ・アートやデザイン・カプチーノを出す店が増えてくることを期待したい。但し、複雑なデザインを描くことが自己目的化してしまうと本末転倒である。素敵な一杯はいれたてが美味しい。延々と時間をかけて「美しい作品作り」に没頭するより、いれたての一杯にサッと一手間かけて手早く飲み手に届けたい。


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