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エッセイ・エスプレッソ


第3話 エスプレッソの出がらし


 「エスプレッソは自分には濃すぎるのでもう少し薄い方がいい」と思う人が、「薄目のエスプレッソ」をいれるつもりで「出がらし入りエスプレッソ」をいれてしまうことがある。

 エスプレッソを抽出するのにかかる時間は、機種により違うものの、電気式マシンの場合約20秒。これでデミタス(小さなコーヒーカップ)1杯弱の濃厚なエスプレッソができあがる。では、そのまま40秒、60秒と抽出を続ければ、普通のコーヒーカップ1杯の普通のコーヒーになるかというと、残念ながらそうはならない。

 エスプレッソの特徴は、コーヒー豆の旨味成分を、圧力をかけて短時間に少量のお湯に溶かし出すことにある。したがって、デミタス1杯のエスプレッソが抽出された時点で、コーヒー豆はその役割を十分に果たし終えたことになる。

 そこを更に抽出を続けると、コーヒー豆の雑味成分がお湯に溶けだした、コーヒー豆の出がらし液が出てくる。かくして普通のコーヒーカップ1杯に注がれた液体は、デミタス1杯弱のエスプレッソと、その2~3倍の分量の出がらし液のブレンドである。当然ながらまずい。

 「エスプレッソ・マシンを買ったのだけど、どうも美味しいエスプレッソができない」という人の話を聞くと、実は美味しいエスプレッソが出来ているのに抽出量が多すぎて出がらし入りにしてしまっている人が少なくない。

 デミタスを持っていないのでついコーヒーカップ一杯にいれてしまうという人には気をつけてもらうしかないが、薄目にしたいという人には「エスプレッソのお湯割り」をお勧めしたい。濃厚なエスプレッソをポットのお湯で薄めてコーヒーカップ1杯にしたものである。

 「カフェ・アメリカーノ」「エスプレッソ・アメリカーノ」等の名でエスプレッソのお湯割りをメニューに加えている店もある。名前はアメリカーノでも、浅煎りの豆でいれたアメリカン・コーヒーとは違って、味は深くカフェインも少ない。何よりも、エスプレッソは出がらし液で割るよりもお湯で割った方が美味しい。

 但し困るのは、同じ名前で出がらしエスプレッソを出している店がある、かもしれない、こと。しかし気にし始めるときりがない。「ダブルエスプレッソ」という場合、コーヒー豆の量が2倍で抽出量も2倍なのか、コーヒー豆の量は同じなのに抽出量が2倍なのか。「マイルドエスプレッソ」という場合、豆の種類が違うのか、抽出量が多いのか、お湯割りなのか・・・。

 美味しいエスプレッソに出逢ったことのある人であればその味を基準に出来るが、エスプレッソをよく知らない人や苦手な人には、「たっぷり注がれたエスプレッソには御用心」としか言いようがない。

 店員に聞くのが確実ではあるが、新しい店に入る度に店員を問い質すのも辛い。よく知らない人が気後れしないようメニューについてきちんと説明を付した店が増えることを願っている。


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