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エッセイ・エスプレッソ


第2話 エスプレッソで眠れない?


 大手系列のカラオケボックスで「エスプレッソで眠れない」という歌謡曲があることを知った。作詞・糸井重里、作曲・鈴木慶一、編曲・岡田徹、歌手は「オリビアを聴きながら」で有名な杏里である。

 歌詞によると、どうやら主人公の女性は、ある男性のことが脳裏を離れないでいるらしい。その男性は、身なりや持ち物がイタリアを想起させる人物らしい。彼女はその男性に関心を抱いていたのだが、その男性は彼女にアプローチすることもなく去ってしまったらしい(この点はイタリアを想起させないのだが…)。

 そして曲はクライマックスにかかり、軽快なリズムに乗ってタイトル・フレーズが連呼される。
   エスプレッソで眠れな~い!
   エスプレッソで眠れな~い!
   エスプレッソで眠れな~い!
   エスプレッソでね・む・れ・ない!
この部分は2番でも、更に間奏の後でも繰り返し演奏される。一曲を通して聴けば「エスプレッソで眠れない」というフレーズが計18回繰り返され、聴く者の脳裏に刷り込まれることになる。

 主人公の女性がエスプレッソを飲んだことを示す描写はない。「エスプレッソ」という言葉に「あっという間に終わった恋」という意味が込められているのだとすればそれなりに含蓄があるのだが、いずれにせよ、彼女が眠れないのはエスプレッソにカフェインが多く含まれているからでは決してない。

 エスプレッソは、豆を深煎りする際にカフェインが飛ぶことと、短時間で抽出するためカフェインが十分に溶け出さないことにより、実は普通のコーヒーよりもカフェインが少ない。しかし、大多数の人は、エスプレッソは普通のコーヒーよりも濃いのでカフェインも多いと誤解している。

 エスプレッソの味が嫌いであれば無理に勧めるつもりは全くない。しかし、素敵なエスプレッソを知らないまま、あるいは知っていながら、「カフェインが多いから体に悪い」という先入観にとらわれてエスプレッソを遠ざけるのでは余りにも惜しい。

 この現状を何とかしたいという思いでホームページまで立ち上げた身にとっては、10年以上前から歌謡曲で「エスプレッソで眠れない」というフレーズが聴く者の脳裏に刷り込まれているのかと思うと、夜も眠れない。


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